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瀬戸内_消えゆく景色
長々とお正月の事を書いてきましたが、最後にこれはブログとして皆さんにお見せするというよりは私の記録として留めておきたい事を書きます。


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この洋館とそれに続く日本家屋は、主人の実家です。
1924年に主人の先々代が建てた家でもう築80年以上です。
前年の1923年は、関東大震災があった年で、地震にも強い家で壊れにくいということで一階平屋建てにしたそうです。
玄関は、この洋館用に一つと裏に日本家屋用に一つあります。

良い時代だったようで、東京から職人さんを呼んで、作らせたそうです。
面白いモノで、この洋館、正真正銘レンガで出来ているのですが、よーく見ると屋根は瓦葺きで、木組みも日本建築仕様、和洋折衷です。
電気も洋館には当時は珍しかったシャンデリアが下がり、電気風呂、冷蔵庫、電話なんかもあったそうです。
私が結婚した頃はまだ、名残で玄関を上がった所に電話室(公衆電話みたいなの)が有りました。
トイレは6畳ほどもあり 昔ながらのトイレ、くら〜くて広過ぎでちょっと不気味ですが 床は箱根の寄せ木細工で職人さんを呼び寄せて作ったそうです。
電気はチューリップが下を向いたような傘が今も付いています。青山の骨董通りで良い値段で売っているアンティークのような・・・。

こう書いていると 「素敵なおうちの自慢話」となるところですが、現実は大違いです。
義姉が白無垢姿で出た洋館の玄関のドアは、もう朽ちた木のようになっています。
もう何年もこの玄関が開いたのを見たことがありません。内側にもいつの間にか荷物が置かれています。

亡くなった義父がまだ現役だった頃は、お正月になるとこの洋館の一番窓側のソファーにデンと座って、お年賀に来られる何十人もの方の接待をしたものでした。
私はまだ新米の嫁で、右往左往しながらお酒とお料理を運んで、極度の緊張と過労で東京に帰るといつも熱を出していました(笑)
その父の背中にあった窓がちょうどこの写真の窓ですが、白いペンキは剥がれ木枠もうボロボロで、もし開けようとしたらそのままばらばらと崩れてしまうかも知れません。
真っ白だった洋館の内壁も埃でくすんで、所々ポロポロと落ちてきています。

横浜などにある異人館の洋館などは、もちろん歴史的に意味のある建物ですから、公の機関が手厚く保護し維持しています。
しかし 主人の家のように本当に普通の古い家は自力で維持していくしかありません。
この維持というのが、ハンパでなく費用がかかるモノなのです。窓枠一つ取っても一つ一つ特注品になります。ガラスはもう既に無いのだそうです。ですから許せる範囲で床とかは、修理してきたようです。

前に電気製品が増えたので、配電とかコンセントとかの増設をしようと、電気屋さんに来てもらったそうですが、昔の配電でさっぱり分からずお手上げ、結局外付けでコードがいたるところを這い、コンセントが付いてしまいました。
もちろん普段のお掃除一つ取っても 年々年老いていく母が一人でこなせるはずもありません。
では、思い切って壊すかというと なにせ地震に強いように土台がしっかり出来ているのでそう簡単には壊せない。一千万円くらいかかると言われたそうです。


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私はこの優美な玄関の柱や、こんなにぼろぼろになっても凛と建つ洋館の姿が大好きで愛おしいとすら思えるのですが、本当に残念ながらこれを維持するだけの力は有りません。
結局だれもどうすることも出来ず、このまま朽ちていくしかありません。
後何年このままで居られるのか。この写真を撮るために立った場所もかつては、小さな噴水もあった洋風の庭園だったそうです。今は駐車場。

よく財産は三代で無くなると言いますが、代々土地と家屋を維持していくというのはやはり並大抵のことではないのだと、財力には縁のない者は思ったお正月でした。
by shogame2 | 2007-01-10 22:58 | 旅のお話 | Trackback | Comments(16)
Commented by うらべに at 2007-01-10 23:45 x
古い物好きの私には、涎のでるようなお宅です!
とは言っても、維持する事にも大金が・・・では、大変ですね。
この件もやはり宝くじが当たったら!の世界でしょうか?
それにしても、ステキです。
Commented by kani34jp at 2007-01-11 10:36
私‥3代目です!(爆)
Commented by kalut at 2007-01-11 11:20 x
古建築や古民家が大好きなワタクシもヨダレもんです、あぁ、中が観たい!大学の課題でもレンガ造りの洋館を取り上げたことがありました。札幌ではどこかの民間が買い取って再生して利用する、っていうのが多いですが、やはり維持ができなくて壊してしまうところもあるようです。ヨーロッパのように、修繕をしながら何百年と使う文化がないのが残念です。
Commented by mikeblog at 2007-01-11 14:51
古いのはいいのですが古すぎると問題なんですよね。わたしの実家も祖父がその前に在った家の材を使えるところは使って建てたものですがさすがに修理をしなくては危なくなってきます。それでだんだん部分的に直していくのですが、直すたびに子供の頃の思い出が消えていきます。費用も出さない私は残念だなあと思うだけですが、帰る度に何かが無くなったり間取りが変わったりしているのは淋しい気持ちです。確かに昔の家は広いけど寒くて使いにくいところもありました。でも今のみんな同じ家みたいなのはやだなあ。うーん、早く宝くじ当たらないかなあ。私は2番目でいいからshogame2さんが一番先に当たってください。神様、頼むよ!!
Commented by t-haruno at 2007-01-11 20:36
確かに、あの窓ガラスひとつをとっても、掃除をするのは大変そうだなぁと思いました。
サッシだと、一気にガーッと拭けてしまいますもんね。
若いうちはともかく、高齢になってくると・・・。

でも、・・・心が苦しいことでしょうね。
なんとかしたい思いは、みなさん、すごく持っておられるでしょうし。

それにしても、個性的なおうちです。大学の建築学科の先生などが、見学に来られているのではないですか?
Commented by shogame2 at 2007-01-11 21:49
★うらべにさん★こんばんは
写真だとあらもあまり見えないのかも知れませんが、かなり傷んでいます。私が結婚した頃はそれでもまだ内装も昔の優美な洋館の面影がありましたが、5年ほど前の瀬戸内地震以降は全く使えなくなり今は見る影もありません。ホント親族の誰かが宝くじでも当たらない限り、本当に残念ですがどうしようもない感じです。
Commented by shogame2 at 2007-01-11 22:23
★kaniさん★こんばんは
ガンバレ、3代目!ってのも変でしょうか(笑)
Commented by shogame2 at 2007-01-11 22:45
★kalutさん★こんばんは
洋館の部屋には、昔は蓄音機があって義父の書いた油絵も掛かっていました。主人が小さかった頃、両親がその蓄音機から流れてくる音楽に合わせてタンゴを踊るのを見たと言っていました。なんだか夢のような話ですよね。そんな部屋ですが数年前の地震以降今は物置化していて見る影もありません。残念!
Commented by shogame2 at 2007-01-11 23:05
★mikeblogさん★こんばんは
そうそう 古すぎるのもね。定期的にキチンと補修できればきっと長持ちしたのでしょうが、そのためには財力も必要で、良くテレビに出ている手入れの行き届いた旧家などは、本当に立派だと思います。そうか、宝くじで畑付き農家を買う予定だったんですが、身勝手でした。反省。当たったら洋館まず直します。
Commented by shogame2 at 2007-01-11 23:22
★harunoさん★こんばんは
こんな和洋折衷の洋館は、当時結構有ったららしいです。歴史的にはあまり重要な建物ではないのでしょう。でも部屋の真ん中にあるすすけたシャンデリアを見上げると、昔の華やかだった頃のこの家と住人のことを想像してちょっと切なくなりますね。きっと当時としては贅を尽くした家だったはずで、この様子を見たらどんなに残念がる事でしょう。でもここで生活をしてきた両親もきっと本意ではないはずです。
Commented by grasshouse at 2007-01-12 10:29
勿体ないですね、そのまま朽ちてしまうのは!
異人館のようなところでそっくり移築保存なんて申し込みがあってくれたらいいですよね。テレビでお願いしてみるとか?
Commented by ピコパパママ at 2007-01-12 15:18 x
本当に惜しいことですね・・。
普請道楽なんて、最近は死語なのでしょうか??
昔の資産家の方々のゆとりを感じます。
今は、ただのお金持ちばかりのような気がします。
私も宝くじに賭けてみましたが、運はまわってきませんでした。
Commented by shogame2 at 2007-01-12 20:50
★grasshouseさん★こんばんは
移築は無理でしょうね。仮に持ち上げられたとしてもバラバラと崩れそうです。こういった物は、歴史的に価値のある物しか保存もできないし、私たちは千葉で生活しているし、色々と難しい問題になってしまいます。宝くじでも当たって、「どうぞ使って下さい」って差し上げる事くらいしか出来ません。
Commented by shogame2 at 2007-01-12 21:02
★ピコパパママさん★こんばんは
普請道楽って言うんですね。ああ 何となく分かりますね。トイレの床なんかに凝ったり、エンタシスの柱だったり。
義母からちょっとしたお姫様だった戦前の優美な生活の様子を聞いたこともありました。
ご先祖もまさかこんな風になるなんて思いも寄らなかったと思います。でもこれも自然な流れかも知れません。実際この家を維持していくのは、金銭的なことももちろんですが、手間も時間もかかることでやはり大変ですから。ご先祖も分かってくれるでしょう。
Commented by y-kokano at 2007-01-14 00:04
本当に素敵なお家。映画に出てきそうですね。
私も中を見たいですー。

実家や自分が小さな頃過ごした所が様変わりしていくのは胸が痛みます。
去年大叔父が亡くなり、そのお家の住人がいなくなったということで、いよいよ明日処分される事になりました。家具等欲しいものは全部もって行って。ゴミになるからと言われたときは辛かったです。

…私は宝くじを買うお金もないです(T_T)。
Commented by shogame2 at 2007-01-14 10:00
★こかさん★おはようございます。
こういうのは、今私たち家族がそこに住んでいると又様子も違うのでしょうが、年老いた母が住みもう主任も離れて何十年も経っているので、どうにも手だてがありません。
ここ彼処にほこりをかぶって置いてあるなにやら古めかしい物も、綺麗に磨けばそれなりにと思いますが、まさか持って来ることもできないしね。
毎度当たらないと分かっていても、億に一つの可能性に賭ける悲しい宝くじです(笑)
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